『多様なニーズへの適切な支援と課題へのアプローチ』
~誕生から現在そして未来に至る連続性のなかで、今自分たちの必要な支援を考える~
憲政史上初めて天皇退位に伴う改元が行われた昨年は、地球規模の気候変動が各地で大規模な災害を引き起こした年でもありました。台風15号、19号をはじめとする災害は、福祉施設をも直撃しました。いまだ復興の途上にある施設も複数あります。
加えて、昨年11月に発生した新型コロナウイルス感染症は、その影響を全世界に及ぼすまでに拡大し多くの犠牲者を出すとともに、グローバル化の負の側面を浮かび上がらせる結果となりました。我が国においても経済活動の停滞を始め、イベントの中止や小中高の一斉休校などが働き方改革途上の国民生活に直接大きな不安と打撃を与える結果となっています。障害福祉業界に目をやれば、福祉施設の多くは、当事者の状況と施設自体の経営状況等鑑み、通常運営を続けていますが、現場では子育てや介護を行っている働き手に、ひいては当事者に負担がのしかかるという構図が顕在化しています。
また、3年前に津久井やまゆり園で起こった障害者大量殺傷事件は、裁判が結審し極刑が言い渡されましたが、被告は自らの言説を変えておらず、この問題が内包する深い闇はかいめいされないままにあります。
このような混沌とした状況の中で、私たち通所施設の現場では、契約制度が施行されて以降度重なる制度改定が行われ、利用者の状態像が変化し、ニーズが多様化するなかで職員がその対応に追われています。もはや想定外という言葉が許されなくなりました。災害の大きさに関わらずどんなときにも事前に備えていることが必要です。被災された体験とそれをのりこえてきたプロセスを学び、自分たちの施設の備えはもちろんですが、取り巻く地域の社会資源とどのような連携やシステムを構築できるのか問われています。
幼児期、学齢期をとりまく養育環境も激変し、放課後等デイサービスや児童発達支援事業等の定型サービスの一定程度の充実は、家族の意識も変容させました。措置時代に、使える社会資源がほとんどない中で子育てをしてきた世代と、契約時代にサービスの利用を前提として子育てをしてきた世代とのギャップは、当事者の生活実態や支援者の働き方にも影響を与えています。また、障害福祉分野の問題は「障害」へのアプローチにとどまらない社会との関係によって捉えられる問題として認識されるようにもなってきました。例えば、虐待、ご本人とご家族の高齢化、強度行動障害といわれる方々への支援、そして長年追い求めてきた地域自立生活に向けた取り組みなど、私たちが高度な専門性を発揮しつつ、複数の関係者や関係機関と連携して対応しなければならない課題が山積しています。
都通研の今年度のテーマは、《多様なニーズへの適切な支援と課題へのアプローチ》としました。私たち支援者には、お一人お一人の当事者の誕生から終末までのステージを視野に入れ、今優先される支援は何かを考えながら取り組んでいくこと求められています。そのために少しでも役立つような実践的な研修を今年度も企画し、皆様にご提供できるよう努めてまいりたいと考えています。
私たち都通研は、研修会による収入を財源として運営する任意団体です。各回の参加費と会員施設からの会費収入が収入の全てであります。過去7年間の研修参加者は、ほぼ年間400名前後で推移していましたが、2019年度は例年よりも参加者がやや減少する結果となりました。また、安定した運営には事務局体制の安定も欠かせません。2019年度は業務委託費が25%多くなり、通信運搬費も各社値上がりが続き、10月消費税アップに伴い、支出は増加し、収支的にはやや厳しい年になりました。この状況をお含みいただきまして、2020年度は昨年以上に多くの方々の参加をいただければ幸いに存じます。
都通研は、知性と感性を最大限発揮して、充実した研修会をつくりあげていきます。この運営に携わるフレッシュな「志」ある運営委員を募っています。我こそはと思われる方はぜひ当会の運営にご参加ください。お待ちしております。